2013年12月15日日曜日

HIKARU YAMADA AND THE LIBRARIANS - 『THE ROUGH GUIDE TO SAMPLIN' POP』全曲解説

突如思い立ったのでやってみようと思います。発売からもう少しで3か月、意外と売れてよかった!まだの人はこの解説読んで買ってみてください。

1. Divide, Rule and Love
 ライブラリアンズが出来てから2番目に作った曲だと思う。bookという単語がついてる曲からのみサンプリングした。Pere Ubu のThe Book Is On The Tableはすぐ思い浮かんだけど他は検索してみて初めて気づいた曲ばかり。Town and Countryのベーシスト、Josh Abramsにはあこがれる。シカゴのAACMで学び、The Rootsのオリジナルメンバーになって、その後シカゴ音響の中心に行くという経歴ヤバい。間奏はアーチ―シェップと南博のバース交換になってるので聴いてみてほしい。
 
 歌詞については。島田桃子さんに誘われてロロの『父母姉僕弟君』という舞台を観に行ったことをきっかけに書いた。
「詩人はあなたと私という二つの人格に自分を分割して書く・俺は自分と彼、彼女について書くが、その彼と彼女は3分の1しか考えというものを持っていない・劇作家は母、父、姉、私、兄、君について書くが父は有益なことを何一つ言えず、姉は何もおもしろいことを出来ない。私を分割統治してくれ」
劇作家はほんとの天才しかやっちゃいけないと思う。シェイクスピアとか。チェーホフとか。自分を分割してキャラクターを作ってるようじゃダメだ。詳細な人物設定をすればあとは勝手に人物たちが会話を始める、とはチェーホフの言葉。

2.Don't Throw Themselves Away
 ライブラリアンズ出来て最初に作った曲。あの頃はほんとに暗かった。せっかくロシアから帰ってきてやったのに誰からも演奏の誘いが無い…とか思ってた頃に書いた。
曲はこの曲を切り刻んで作っています。http://www.youtube.com/watch?v=cnIMEsCsSpc
声入りのものをサンプリングするのはけっこう難しい。ピッチを変えるとガラッと雰囲気が変わってしまうから。あとはデレクベイリーのサンプルも使ってます。これが水道橋Ftarriに置いてもらってる根拠(もちろん冗談)。
邦題は憑依を解くな。基本的にみんな物事を考えている気になっているだけでほんとはただ操られてるかなぞってるだけ、個人の意見なんていうものは幻影だと思っていて、そんな中で俺は頭を使って物事考えてると思っています。しかし、歌詞の始まりに訓練と規律、という言葉を無意識にも使ってしまったことを恥じています。みんな自分の言葉を使おう!

3.summer
 これはインスト。ジェットセットの方たちがしきりとFrench Impressionistsをサンプリングしてることに興奮していたのですが、実際使っているのはライブの拍手とMCの声の一部だけでちょっと申し訳ない。しかしそれが曲の根幹を支えているのでいいか。

4.It's Rainmaking Time!
 音源作ることを決めて急いで作った曲、の割には自分では一番気に入っている。彼女(ジャケの写真も撮ってくれた)からは評判が悪い(この曲はクールな女の子が好きな男の子にはウケそうだけどクールな女の子が好きな女の子は好きじゃないタイプ)とのこと。
曲はほぼDam-Funkのクズ曲を元にして作ったが元の曲よりはるかに良いと思う。ピッチを変えると表に出てくる帯域が変わったりして、原曲では聴こえなかったメロディが立ち上がってきたりすることがあるのでサンプリングは面白い。ギターのカッティングはMuという西海岸のサイケバンドから取ってきている。ビーフハートの初代ギタリストが在籍。ビーフハートに階段から突き落とされたあと辞めてこのバンドに参加したとのこと。
歌詞はアメリカで100年以上前に人工降雨を試みていたチャールズハットフィールドという人のwikipediaからサンプリングした。今調べて知ったのですが、英語の問題とかで使われてる逸話だそうですね。みんな覚えてないかもしれないけどこの曲作ったあと今年の夏は100年前とほぼ変わらない仕掛けの人工降雨が日本でも行われた。奇蹟は信じない。科学は信じる。

5.Song about two monopolies
 これは2年前のクリスマスにロシアで作ったライブラリアンズ計画の元になった曲。いろんなクリスマスソングをサンプリングしたらクリスマスソングが作れるんじゃないかと思ったのだった。ちゃんとロシアはペテルブルグのフリージャズトランぺッター、ヴャチェスラフ・ガイヴォロンスキーの曲も使っている。
歌詞は香辛料が専売になった、という話と好きな女の子が国営放送のキャスターになったのを外国から憂いている、というお話。こういう寓話は外国に住んでる時しか書けないなーと今になって思う。
出だしのチャーリーパーカーのソロがほんとにかっこいい。最初この曲は自分でサックス吹こうかと思っていたけど、パーカーがクリスマスに演奏したライブを思い出して貼りつけたらバッチリだった。サンプリングでループを切り出すというのは今までいろんな人が散々やってきたけどソロを持ってきて違うコードの上にそのまま貼る、というのは自分の発明だと思う。

6. Feel
 この曲はセシルマクビーというベーシストによるダラダラしたスピリチュアルジャズ(http://www.youtube.com/watch?v=TflsEPcAf2k)にビートをつけて整理した曲。たぶんCD化されていない。海外のアップロードサイトから落とした。手に入らないものはレコード会社の怠慢なのだからガンガンアップロードすればよい。と思う。

7. Candid/saint
 これは全然指摘されなかったけどエリックドルフィーの一番有名なセリフから歌詞もサンプリングしている。キャンディドドルフィーというキャンディドレーベルの編集盤をCandied Dolphy、だと思っていて砂糖漬けのドルフィーとは、糖尿病で死んだ人についてなかなかなことだと思っていた、ところから発想した。ドルフィー、チェットベイカー、ロンバートン(ローランドカークのバックでピアノ弾いてた人)の音を使っている。
 juke?ポストダブステップ?はなんとなくいろいろ聴いていて、もっと自由なフォーマットになるかと思ってたけどそうでも無かった。打ち込みのビートはそういう勘違いが反映されていると思う。あとボーカルの穴迫には普段何も指示とかボーカルディレクションとかしないのですが、これだけは黒人ぽく、ディスコっぽく?とか指示した気がする。


最後まで読んでくれてありがとうございました! CDの取り扱い情報などはこちらへ

0 件のコメント:

コメントを投稿