ライブラリアンズ『Blank In Our Spirits』対談 #2
hikaru yamada and the libraank In Our Spirits』のリリースに関連して、友人の諸星友亮と山田光・北川梓によるテキストベースでの対談をやりました。11/15に行った2回目の対談を先にアップします!(6月にやった1回目は近日公開予定。)
事前に行ったお互いへの質疑応答も一緒に見ながら読んでください。
諸星:では10時も超えたので1問目から行きますか?
Q. (山田)歴史上の曲で好きなスネアとキックが鳴ってる曲を教えてください
山田:キックとスネア...。
諸星:はい。まずリバースエンジニアリング的(?)に3人の挙げた曲を1つずつ山田さんに簡単に解説してもらえたりします?
山田:簡単にいうと、時代が違う曲でもミュートしたスネアにあとから付加したリバーブがついているスネアが好き、という話なんですが。この話はブログで展開しようかな。諸星さんの挙げた2曲もミュートスネアだと思いますね。趣味が良い。どちらも良い音です。
23 Skidoo - The Gospel Comes To New Guinea (1981)
北川:(藤本美貴の「大切」はあまり言えることがないと思うのでスルーして頂いて問題ありません…)。
諸星:グルーピングの問題というか、僕が挙げた2曲はニューウェイブというのがあって、その前後の自分の好きな曲という基準で挙げました。山田さんがDinosaur Lを挙げていたので。藤本美貴の曲は2000年代のJ-POPがどういう音色だったのかという感じのサンプルでしょうか。ちょっとスネアのミュートからやや話はそれてしまいますが、音が良いJ-Popあるんでしょうか?というのもエンジニアの本を読んでたらJ-POPはトラック数自体というより、同時に鳴ってるトラック数が多いから、楽器の奥行きを擬似的に出すため、デジタルリバーブを多用するみたいなことが書いてあったんです。だからJ-POPはどこで録音しようとJ-Popになると。
山田:大切、はR&B系のリズムキットですね。90年代後半によく使われていた感じのキックとスネア。でも音数少なめで良い曲ですね。
音が良いJ-POPあるのだろうか。最近tripleSというK-POPグループの日本人ユニット?の曲が全部日本語でJ-POP調なんですが、エンジニアリング的にちゃんとしたJ-POPだなと思いました。あと90年代のCharaとか、オルタナ?サイケ?ぽい音づくりなんだけどあれはあれで最悪な音だと思う...。詳しくないけど奥田民生とか?日本のスタジオが作ったロックの音は最悪だと思う。日本のスタジオが作ったオーガニックなロック??
※注 改めて奥田民生の曲をいくつか聴いてみたがそこまで悪くなかった(すみません)
諸星:ブリリアントグリーンはある意味すごい。エンジニアリングの問題というか、1曲の中でイントロはオアシス、フィルインはストーンローゼズみたいな曲があったりする。
山田:ブリリアントグリーンは自宅スタジオに実機のプレートリバーブ持ってるくらいなのに全然良くないと思う。同じ話になった!
※注 申し合わせたわけでもないのにチャットでほぼ同時に似たような内容の入力が行われたということ
北川:ブリリアントグリーン!以前山田さんと話題に挙がった安室奈美恵のPLAYとかは音的にどうなのでしょうか?好きでよく聴いていました。
山田:安室奈美恵の2000年代の曲はすごいと思う。サンプリングみたいな作り方だしライブラリアンズに近い。Splice以前だからどうやってるのか...サンプリングCDの時代なのかな。
北川:can't sleep〜のイントロのサックスのリフとか、Spliceで作られたKPOPですよね。
Namie Amuro - Can't Sleep, Can't Eat, I'm Sick (Instrumental)
諸星:こんなにモダンなことやってたんだ。Spliceの話題も出たしK-POPに行きませんか?多分安室奈美恵以外に褒めは出ない……ような気がします。
山田:いきましょう。
諸星:ちょっと音楽の話は後でいくらでも出来そうなので、デザイン面とかヴィジュアル面のことを北川さんに伺いたいです。
山田:そうですね!パッケージの話おもしろい。
諸星:これは自分に寄せた話で申し訳ないけど、K-POPの映像(の引用)に感じる微妙な遅さというのが、デザイン面でもあるというのは興味深いですね。
北川:いろいろな流れを追えているわけではないのですが、Acid Graphicsはデザインでそういう括りが言葉にされてから1〜2年経ってKPOPに登場した気がします。そしてXGなどが更に遅れてやっています…。あるグループのクリエイティブが◯◯に似ている、パクりでは、と話題になり参照元とされた作家もそれに言及したところ、次作はその参照元の作家に依頼が行く…というような流れがありました。めちゃくちゃだけど勢いがあるなと思います…。
山田:Acid Graphicsなるほど。(参考リンク:https://avyss-magazine.com/2019/12/05/11382/)。
へー。カニエウエスト的ですね。黙ってサンプリングしておいて、バレたらあとからクレジットしてちゃんと金払うみたいな。
諸星:映像面の引用って多分10年〜20年くらい前のものでむしろ当時のそれらの愛好者に喜ばれたりする(=Y2Kリバイバル)し、金は発生しないはずなんですけど、デザインはちゃんと金銭的なり、社会的な報いがあるんですね。
北川:10〜20年前の引用だとデザインでも受け取られ方が変わりそうですね。Y2Kリバイバルがまた別の言葉(私も詳しくないので後できちんと調べますがウィッシュコアという言葉ができたそうです)になって流行ったりしています。
(参考リンク:与えられた場所で輝け WISHコアから見るK-POPファンダムとファッション )
注 : NCT WISHのグループ公式キャラクターやロゴデザインは日本人のanccoさんというイラストレーターなのですが、韓国のチームがどうやって見つけたのか気になります(北川)
https://instagram.com/ancccoo/
諸星:なるほどなぁ……。音楽の話をするとK-Popの話をするときに一番とっかかりになるのはいつからK-Popになったのかというところに興味があるんですね。それこそ僕が若い頃は韓国人に日本語を練習させてJ-Popを歌わせてたじゃないですか。
山田:たぶんその辺りは新書とかで解説が出てる気がする。第◯世代的な話。
諸星:あぁなるほど。では単純に山田さんがこれは良いと思える最近のK-Popの曲とかその傾向を聞きたいです。
山田:今年一番好きだったのはこの曲ですね。
AtHeart 앳하트 'Plot Twist'
北川:初めて名前を聞いたグループです…。かっこいい。
山田:イージーリスニング以降といわれるような。薄いK-POPが好きですが、薄すぎて聴いてもすぐ忘れてしまう。
北川:イージーリスニングという言葉のK-POP内での使われ方も面白いですよね。最初に誰かのツイートでその使われ方を見た時はリチャードクレイダーマンみたいなものを想像しました…。
山田:そうそう。イージーリスニングでDJするというのはかなり過激な行為だったのに(台車さんたちとか)。意味が変わってしまった。
諸星:なるほど、パーシーヒースとかクレイダーマンじゃなくて、音楽誌とか音楽サイトでいう"チル"みたいな意味でイージーリスニングが使われていると。
北川:音数が少ないやさしめの曲(NewJeans)がイージーリスニングと呼ばれ、ME:I のデビュー曲がイージーリスニングで「そういうのもういいよ」的な受け取られ方をされていたのが面白かったです。
山田:熱く張り上げるボーカル・コレオじゃないやつ。K-POPでもともと使われてたらしいけど、ME:I のデビュー曲で日本にも言葉が広まった。
北川:"チル"ですね。
山田:あとNewJeansが流行った理由の一つに、作曲のコスト・工数が減ったというのがあると思う。このサウンドだったら自分たちでもできる、みたいに世界中の人が思ったことで自主ローカライズkpopが増えた。
最近ブラジル人が書いているkpop批評ブログをよく読んでいるのですが。グループのデビューEPが良くても、そのグループの今後を占うとは限らない、最近のK-POPはサウンドの流行をどこも追うだけでグループごとのサウンドの個性は無いと言っていました。デザインと同じですね。
北川:ローカライズK-POPグループ…。すみません、GIRLSETについての話です。
山田:ローカライズK-POPや自主ローカライズK-POPも面白い現象だと思う。モンゴルのK-POP、アルゼンチンのK-POP フランスのK-POPなどなどが最近はあります。
THE WASABIES - Сайн байна уу, санаандгүй хонгор минь (モンゴルのNewJeans - Supernatural風?)
諸星:へー、ボサノヴァ並に世界に広がってるんですね……。ところで山田さんは自身でトラックを作るとき、チルみたいなことは意識してますか?
山田:チル、意識したことないですね。熱くはないと思うが。
諸星:そう熱くはない。ディーヴァ系のものが苦手という話に繋がると思うんですが。
山田:イージーリスニングと対になる言葉がガルクラ(ガールズクラッシュ)なんですが、ガルクラの曲を敢えて作るというのはやってみたいと思いつつ今年は出来なかった。バラード?も作ったこと無いな とはいえみんな普通は作らないか...。
諸星:なるほど。ところでSpliceの話しなのですが、K-POPとSpliceという動画を見ると、なんというかこの前の対談で北川さんが挙げていた椹木野衣の「シミュレーショニズム」で挙げられているような初期のサンプリングミュージックを思い出すような熱気があるんですよね。この前、山田さんがK-POPとダブみたいなことを言ってましたけど、それもわかるんですよね。好きなものに引き付けて語っているのではなく、何というか既視感のあるフレーズをてらいなく使うところとか。
山田:ふむふむ。あのspliceに囚われてる感じはなんなんだろうとは思いますね。
LIMELIGHT - TWENTY TWENTY (E.PIANO)
これはLIMELIGHTというグループのEPに入っているピアノバージョンなのですが、作曲チームのインタビュー動画を見たらピアノ弾けるのにspliceのピアノサンプルを切って作ってる、と言ってました...。
NINE MUSIC ACADEMY [SUB]ライムライトの収録曲を 全部作詞作曲したって?
この情熱はよくわからない。
諸星:そこまでサンプルなんですね……徹底してる。
北川:ピアノ弾けるのに?なぜ…すごい。
山田:
6歳からピアノ弾いててすごく上手いのに、作業を後ろで見ていたらサンプルを修正していました spliceを切っていたのです(爆笑) と動画で言っています。謎。
諸星:マジで謎ですね。すいません、なんかあまりにK-Popに無知すぎて「へえ……」で言葉が止まってしまう……。
北川:切り貼りによる微妙なクールさ?が出ているのでしょうか?私には違いがわかりませんが…。
山田:無理やりいえばテクノポップというか。楽器弾けるのにシンセでYMOやる、みたいなことなのか...?
諸星:ピアノは録音が難しいとかサンプルの方がトラックに馴染みやすいとかそういうことではないんですよね?
山田:生楽器を使うわけではなく、鍵盤で弾いてMIDIで出すのかと思ったらspliceでした(爆笑)ということだと思います。
諸星:ああそうか……。謎だ……。
山田:あとK-POPの作曲家tips見てると、とにかく歪ませるというのが特徴でソフトシンセのプリセットはディストーションをかけた状態で鳴らして選ぶらしいです。なんでもディストーションかけるのは良くない、とt話してる動画も見たことあるけど。そこまでなんでも歪ませる風潮があるのが驚き...。とにかく手法が合理的というか合目的的というか、全然違いますよ日本とは。
諸星:ふーむなるほど……知らないことばかりだ……僕もSpliceの動画に囚われすぎていたのかもしれない……。
山田:K-POPのプロダクションは面白すぎるのでブログでもいろいろ書きたいアイデアがあります。
諸星:今回、僕がK-POPをあまり知らないので、続きは山田さんのブログでの方がいいのかもしれない……。
山田:そうですね。自分も文化的なことは詳しく無いけど、手法が狂ってるからそれを自分の音楽に応用しようと思って勉強している感じです。今日はとりあえずこの辺りにしておきますか。あと2回くらいやる必要があるかな。メンバー編(北川さん深掘り回?)。映画編(諸星さん深掘り回)。
諸星:そうですね。北川さん編でしょう。マジで僕はやめた方がいいです、大炎上します(苦笑)。あくまでライブラリアンズのリリースなので北川さん編でもう1回でしょう。
北川:気になります!笑。
山田:なんというか、自分が興味あるのは結局タイニーポップ的な話で。tiny kpopは可能かとか。tiny movieは可能かとか。分業・産業化されてるものを、個人でやる、みたいな話をしたいです。映画でそれが可能なのか、というのを考えたい。
諸星:やや強引ですが、タイニームービーを韓国でやってるのが、最近ののホン・サンスかもしれない。他にもいるかもしれませんが、とにかく予算が低いが頑張っている(低そうに見えるが頑張っている)。音楽だとどうなんだろう。2015とか2016年以降のホン・サンス映画は全部そんな感じというか、さらに付け加えるなら面白いのか面白くないのかももうわからない、作っただけじゃんみたいなのもあります(けど、賞レースは強い)。
山田:今年観た中では諸星さんに教えてもらったイラン映画、あれは凄かったですね。というかあれしか映画観てないな。5年ぶりくらいに映画観た。
北川:イラン映画、タイトル伺ってもよろしいでしょうか。
諸星:イラン映画、『あの家は黒い』です。まぁあれは例外中の例外というか……。
すいません、終わりましょうと言ってからが長いですね。韓国のバカ映画(その名も『バカ狩り』 )を貼って、まぁまた次回、北川さん編をやりましょう。
바보사냥(1984) / Hunting for Idiots
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